家族が亡くなったとき、残された家族の生活を支える公的な制度が「遺族年金」です。名前は知っていても、「自分の家族は対象になるのか」「いくら受け取れるのか」まではわからない、という方が多い制度でもあります。

遺族年金は大きく分けて、国民年金からの「遺族基礎年金」と、厚生年金からの「遺族厚生年金」の2種類です。どちらか一方だけの場合もあれば、両方を受け取れる場合もあります。

この記事では、遺族年金の対象・金額・手続きを、日本年金機構の公式情報をもとに整理しました。

この記事でわかること

  • 遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い
  • それぞれ対象になる人と「子」の条件
  • 実際にいくらになるか(令和8年度の年金額で計算)
  • 中高齢寡婦加算などの上乗せのしくみ
  • 手続きの流れとFAQ

まず結論

遺族年金の全体像は次のとおりです。

項目遺族基礎年金遺族厚生年金
どの制度から国民年金厚生年金
亡くなった方の要件国民年金の被保険者など厚生年金の被保険者など
受け取れる人子のある配偶者・子配偶者・子・父母・孫・祖父母(優先順位あり)
金額(令和8年度)847,300円+子の加算亡くなった方の報酬比例部分の4分の3
子がいないと受け取れない受け取れる場合がある

会社員・公務員だった方が亡くなった場合は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方の対象になることがあります。自営業などで国民年金だけに加入していた方の場合は、遺族基礎年金のみが対象です。

制度の土台となる違いについては厚生年金と国民年金の違いもあわせてご覧ください。

遺族基礎年金の対象になる人

亡くなった方の要件

日本年金機構によると、次のいずれかに該当する方が亡くなったときに支給されるとされています。

  1. 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
  2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
  3. 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

保険料納付要件

死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要とされています。

ただし、死亡日が令和18年3月末日までで、亡くなった方が65歳未満の場合は、死亡日の前日において直近1年間に保険料の未納がなければよいという特例があるとされています。

保険料を納めるのが難しい時期があった方は、未納のままにせず免除・猶予の申請を検討しておくことが、この要件の面でも意味を持ちます。

受け取れる人

亡くなった方によって生計を維持されていた、次の方が対象とされています。

  • 子のある配偶者

ここでいう「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害等級1級もしくは2級の状態にある方を指すとされています。

重要なのは、遺族基礎年金は「子」が要件になっている点です。子がいない配偶者は、遺族基礎年金の対象にはならないとされています。

遺族厚生年金の対象になる人

亡くなった方の要件

日本年金機構によると、次のいずれかに該当する方が亡くなったときに支給されるとされています。

  1. 厚生年金の被保険者である間に死亡したとき
  2. 被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
  3. 障害厚生年金(1級・2級)を受け取っている方が死亡したとき
  4. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

1と2については、遺族基礎年金と同様の保険料納付要件(3分の2以上、または直近1年間の未納なしの特例)があるとされています。

受け取れる人と優先順位

遺族厚生年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取るとされています。

順位対象
1子のある配偶者
2子(18歳到達年度の末日まで、または20歳未満で障害等級1級・2級)
3子のない配偶者
4父母(55歳以上・受給開始は60歳から)
5孫(18歳到達年度の末日まで、または20歳未満で障害等級1級・2級)
6祖父母(55歳以上・受給開始は60歳から)

遺族基礎年金と違い、子がいない配偶者でも対象になる場合があるのが遺族厚生年金の特徴です。

なお、令和7年の法律改正により、遺族厚生年金や老齢年金の繰下げ受給との関係について見直しが行われているとされています。改正の適用時期や内容は年齢・状況によって異なるため、ご自身のケースについては年金事務所にご確認ください。

実際にいくらになるか(計算してみる)

制度の説明だけではイメージしにくいので、令和8年度の金額を当てはめて計算してみます。

遺族基礎年金の額

日本年金機構によると、令和8年4月分からの遺族基礎年金の額は次のとおりとされています。

  • 基本額(昭和31年4月2日以後生まれの配偶者が受け取る場合):847,300円
  • 子の加算額:1人目・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円

子のある配偶者が受け取る場合の年額は、「847,300円+子の加算額」です。実際に計算すると次のようになります。

家族の状況計算式年額月額の目安
配偶者+子1人847,300+243,8001,091,100円約90,900円
配偶者+子2人847,300+243,800×21,334,900円約111,200円
配偶者+子3人847,300+243,800×2+81,3001,416,200円約118,000円
配偶者+子4人847,300+243,800×2+81,300×21,497,500円約124,700円

たとえば子どもが2人いるご家庭であれば、遺族基礎年金だけで年約133万円、月あたりおよそ11万円が目安になる計算です。

3人目からは加算額が81,300円に下がるため、子どもが増えても伸び方はゆるやかになります。

なお、配偶者がおらず子だけが受け取る場合は、847,300円を子の数で割った額に加算額を足す形になるとされており、計算方法が変わります。

遺族厚生年金の額

遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3とされています。厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算されるとされています。

報酬比例部分は、おおまかに次のように計算されます(平成15年4月以後の期間の場合)。

平均標準報酬額 × 5.481 / 1000 × 被保険者期間の月数

これを使って、被保険者期間が300月未満(300月みなしが適用される)の方のケースを計算してみます。

平均標準報酬額報酬比例部分(300月)×3/4=遺族厚生年金月額の目安
25万円411,075円約308,300円約25,700円
30万円493,290円約369,900円約30,800円
35万円575,505円約431,600円約35,900円
40万円657,720円約493,200円約41,100円
50万円822,150円約616,600円約51,300円

計算の途中を1行で追うと、平均標準報酬額30万円の場合は「300,000 × 5.481 ÷ 1000 × 300月 = 493,290円」、その4分の3で「約369,900円」となります。

両方を受け取る場合の合計

会社員だった配偶者が亡くなり、子が1人いる場合は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方の対象になることがあります。

たとえば平均標準報酬額が30万円で、子が1人いる配偶者のケースでは、

  • 遺族基礎年金:1,091,100円
  • 遺族厚生年金:約369,900円
  • 合計:約1,461,000円(月あたり約12万2,000円)

が目安になる計算です。

一方、自営業などで国民年金だけに加入していた方が亡くなった場合は、遺族基礎年金の1,091,100円(月約9万900円)のみが目安となり、その差は年間で37万円ほどになります。

計算にあたっての注意

上の金額は、しくみを理解していただくための概算・目安です。実際には次の点で変わります。

  • 平均標準報酬額は、亡くなった方の全期間の給与・賞与をもとに計算されます
  • 平成15年3月以前の加入期間がある場合は、別の計算式(平均標準報酬月額×7.125/1000)と組み合わせて計算されます
  • 過去の報酬は現在の水準に再評価して計算されます
  • 被保険者期間が300月以上の場合は、実際の月数で計算されます
  • 遺族基礎年金の額は昭和31年4月1日以前生まれの方では844,900円とされており、生年月日で異なります
  • 年金額は毎年度改定されます

正確な金額は、年金事務所または年金相談センターにご確認ください。

中高齢寡婦加算

子がいない、または子が18歳到達年度の末日を過ぎて遺族基礎年金が受け取れなくなった妻については、遺族厚生年金に上乗せがある場合があります。

日本年金機構によると、次の要件に当てはまる妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、年額635,500円(令和8年度)が加算されるとされています。

  1. 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
  2. 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた「子のある妻」が、子が18歳到達年度の末日に達したなどの理由で遺族基礎年金を受け取れなくなったとき

年635,500円は月あたりおよそ5万2,900円にあたります。子どもが高校を卒業して遺族基礎年金が終わったあとの生活を支える役割がある加算です。

なお、亡くなった夫の厚生年金の被保険者期間が20年以上であることなどの条件があるとされています。

手続きの流れ

ステップ1:どの年金の対象になるか確認する

亡くなった方が国民年金だけだったのか、厚生年金にも加入していたのかで、請求先と請求できる年金が変わります。

ステップ2:必要書類をそろえる

一般的に次のような書類が必要とされています。

  • 年金請求書
  • 亡くなった方と請求する方の基礎年金番号がわかるもの
  • 戸籍謄本(続柄・死亡日の確認のため)
  • 世帯全員の住民票の写し
  • 亡くなった方の住民票の除票
  • 請求する方の収入が確認できる書類
  • 子の収入が確認できる書類(在学証明書など)
  • 死亡診断書(死体検案書)のコピーなど
  • 受取先金融機関の通帳など

必要書類はケースにより異なるため、事前に窓口へ確認しておくと二度手間を防げます。

ステップ3:窓口へ提出する

  • 遺族基礎年金のみ:お住まいの市区町村役場(第3号被保険者期間がある場合などは年金事務所)
  • 遺族厚生年金を含む場合:年金事務所または年金相談センター

ステップ4:審査・決定

審査を経て年金証書などが届き、その後に振り込みが始まります。時効の定めもあるため、早めの手続きが確実です。

ご家族が亡くなったあとの手続き全般については退職後の手続きガイドの考え方も参考になりますが、遺族年金は専用の請求手続きが必要です。

注意点

  • 遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」が対象です。子がいない配偶者は対象になりません
  • 「子」は18歳到達年度の末日まで(障害等級1級・2級の場合は20歳未満)という年齢制限があります
  • 保険料の未納が多いと、納付要件を満たさず受け取れない場合があります
  • 65歳以降に自分の老齢厚生年金を受け取る場合、遺族厚生年金との間で調整が行われる場合があります
  • 年金額は毎年度改定されるため、この記事の金額は令和8年度時点のものです
  • 労災による死亡の場合など、他の給付との調整が行われることがあります

よくある質問(FAQ)

Q1. 子どもがいない場合、遺族年金はもらえませんか? A. 遺族基礎年金は子のある配偶者または子が対象とされているため受け取れませんが、亡くなった方が厚生年金に加入していた場合は、遺族厚生年金の対象になる場合があります。

Q2. 自営業の夫が亡くなりました。何が受け取れますか? A. 国民年金だけに加入していた場合は、遺族基礎年金が対象になる場合があります。子の要件や保険料納付要件を満たすかがポイントです。要件を満たさない場合でも、寡婦年金や死亡一時金の対象になることがあるため、年金事務所にご相談ください。

Q3. 子が18歳になったら遺族基礎年金は止まりますか? A. 「子」は18歳になった年度の3月31日までとされているため、その時点で終了するのが原則です。妻が受ける遺族厚生年金には、要件を満たせば中高齢寡婦加算が加算される場合があります。

Q4. 自分の老齢年金と両方受け取れますか? A. 65歳以降は併給の調整が行われる場合があります。組み合わせによって取り扱いが異なるため、年金事務所にご確認ください。

Q5. 再婚したらどうなりますか? A. 婚姻したときなど、一定の事由に該当すると受給権を失うとされています。届出が必要になるため、窓口にご確認ください。

まとめ

  • 遺族年金には遺族基礎年金(国民年金)と遺族厚生年金(厚生年金)がある
  • 遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」が対象。令和8年度は847,300円+子の加算(1人目・2人目各243,800円、3人目以降各81,300円)
  • 遺族厚生年金は亡くなった方の報酬比例部分の4分の3。300月未満は300月とみなして計算される
  • 平均標準報酬額30万円・子1人のケースでは、両方合わせて年約146万円(月約12万2,000円)が目安の計算
  • 要件を満たす妻には、40歳から65歳まで年635,500円の中高齢寡婦加算がある場合がある
  • 最新情報は日本年金機構「遺族年金」で必ずご確認ください

遺族年金は要件が細かく、ご家族の構成や加入歴によって受け取れる金額が大きく変わります。実際の請求にあたっては、年金事務所または年金相談センターにご相談ください。

参考資料

最終確認日

最終確認日: 2026-07-17

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