年末調整の用紙に「扶養控除」という欄があります。子どもや親を扶養していると税金が安くなる、というところまでは知っていても、「いくら安くなるのか」まで確認したことのある方は多くないかもしれません。
扶養控除は、扶養している家族の年齢や同居の状況によって38万円・63万円・48万円・58万円と金額が変わります。そして令和7年分からは、扶養に入れられる家族の所得の条件も変わりました。
この記事では、扶養控除の区分と、実際に税金がいくら軽くなるのかを、国税庁の公式情報をもとに計算しながら整理しました。
この記事でわかること
- 扶養控除の対象になる家族の条件(令和7年分からの改正を含む)
- 年齢・同居の状況による4つの区分と控除額
- 実際に税金がいくら軽くなるか(区分別・税率別に計算)
- 令和7年に新設された「特定親族特別控除」のしくみ
- 手続きの流れとFAQ
まず結論
扶養控除の全体像は次のとおりです。
| 区分 | 年齢(その年12月31日時点) | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族 | 16歳以上19歳未満・23歳以上70歳未満 | 38万円 | 33万円 |
| 特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 | 45万円 |
| 老人扶養親族(同居老親等以外) | 70歳以上 | 48万円 | 38万円 |
| 同居老親等 | 70歳以上(同居している父母・祖父母など) | 58万円 | 45万円 |
※住民税の控除額は名古屋市・福岡市・横浜市など各自治体の公式案内による
覚えておきたいポイントは3つです。
- 16歳未満は扶養控除の対象外とされています(児童手当があるため)
- 大学生などの年代(19〜22歳)は特定扶養親族として控除額が大きくなります
- 所得税と住民税で控除額が違います
配偶者については扶養控除ではなく配偶者控除・配偶者特別控除という別の制度になります。
扶養控除の対象になる人
国税庁によると、扶養親族とは、その年の12月31日時点で次の4つの要件すべてに当てはまる方とされています。
1. 配偶者以外の親族であること
6親等内の血族および3親等内の姻族が対象とされています。里子や、市町村長から養護を委託された老人も含まれます。
配偶者は扶養控除の対象外です。配偶者は配偶者控除・配偶者特別控除の対象になります。
2. 納税者と生計を一にしていること
「生計を一にする」とは、必ずしも同居している必要はないとされています。たとえば下宿している大学生の子どもや、別居して仕送りを受けている親も、生活費を送っているなど生計が同じであれば要件を満たす場合があります。
3. 年間の合計所得金額が58万円以下であること
ここが令和7年分から変わった点です。
国税庁によると、令和7年度税制改正により、扶養親族の合計所得金額の要件が48万円以下から58万円以下に引き上げられたとされています。この改正は令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されるとされています。
給与収入だけの方の場合、給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられたため、
58万円(所得要件)+ 65万円(給与所得控除の最低保障額)= 123万円
となり、給与収入123万円以下であれば扶養親族の要件を満たす計算になります。改正前の103万円から20万円広がったことになります。
いわゆる「103万円の壁」がよく話題になりましたが、税金の面ではこの123万円が新しい目安になりました。一方で、社会保険の106万円・130万円の壁はこの税制改正とは別の制度であり、変わっていない点にご注意ください。詳しくは扶養の壁の判断ガイドをご覧ください。
4. 事業専従者でないこと
青色申告者の事業専従者として給与を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないことが要件とされています。
「控除対象扶養親族」は16歳以上
国税庁によると、控除対象扶養親族とは「扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人」とされています。
つまり、15歳以下の子どもは扶養親族ではあっても、扶養控除の対象にはならないということです。これは、16歳未満については児童手当などの給付で支援するという考え方によるものとされています。
4つの区分の違い
一般の控除対象扶養親族(38万円)
16歳以上で、特定扶養親族・老人扶養親族のいずれにも当てはまらない方です。年齢でいうと16歳以上19歳未満、および23歳以上70歳未満が該当します。
特定扶養親族(63万円)
19歳以上23歳未満の方です。大学生などの年代にあたり、教育費の負担が重い時期であることから控除額が大きく設定されています。
38万円ではなく63万円ですから、一般の区分より25万円も多い計算です。
老人扶養親族(48万円)
70歳以上の方です。同居していない場合はこの区分になります。
同居老親等(58万円)
70歳以上のうち、納税者本人または配偶者の直系尊属(父母・祖父母など)で、同居している方です。老人扶養親族より10万円多い58万円となります。
「同居」については、病気の治療のための入院により別居している場合は同居として扱われることがあるとされていますが、老人ホームなどへ入所している場合の扱いは異なるとされています。判断に迷う場合は税務署にご確認ください。
実際にいくらになるか(計算してみる)
ここがいちばん気になるところだと思います。控除額がそのまま返ってくるわけではない、という点をおさえて計算してみます。
減税額の計算式
所得控除は「所得から差し引く」もので、「税額から差し引く」ものではありません。そのため、実際の減税額は次の式で計算します。
減税額の目安 = 所得税の控除額 × 所得税率 + 住民税の控除額 × 住民税率(10%)
所得税率は課税所得によって次のように決まります。
| 課税所得の目安 | 所得税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超330万円以下 | 10% |
| 330万円超695万円以下 | 20% |
| 695万円超900万円以下 | 23% |
区分別・税率別の減税額
上の式に当てはめて計算すると、次のようになります。
一般の控除対象扶養親族(所得税38万円/住民税33万円)
| 所得税率 | 所得税の軽減 | 住民税の軽減 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 5% | 19,000円 | 33,000円 | 約52,000円 |
| 10% | 38,000円 | 33,000円 | 約71,000円 |
| 20% | 76,000円 | 33,000円 | 約109,000円 |
| 23% | 87,400円 | 33,000円 | 約120,400円 |
特定扶養親族(所得税63万円/住民税45万円)
| 所得税率 | 所得税の軽減 | 住民税の軽減 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 5% | 31,500円 | 45,000円 | 約76,500円 |
| 10% | 63,000円 | 45,000円 | 約108,000円 |
| 20% | 126,000円 | 45,000円 | 約171,000円 |
| 23% | 144,900円 | 45,000円 | 約189,900円 |
老人扶養親族(所得税48万円/住民税38万円)
| 所得税率 | 所得税の軽減 | 住民税の軽減 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 5% | 24,000円 | 38,000円 | 約62,000円 |
| 10% | 48,000円 | 38,000円 | 約86,000円 |
| 20% | 96,000円 | 38,000円 | 約134,000円 |
同居老親等(所得税58万円/住民税45万円)
| 所得税率 | 所得税の軽減 | 住民税の軽減 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 5% | 29,000円 | 45,000円 | 約74,000円 |
| 10% | 58,000円 | 45,000円 | 約103,000円 |
| 20% | 116,000円 | 45,000円 | 約161,000円 |
計算の途中を追ってみる
たとえば所得税率10%(課税所得195万円超330万円以下)の方に、大学生の子どもが1人いる場合。
- 所得税:63万円 × 10% = 63,000円
- 住民税:45万円 × 10% = 45,000円
- 合計:108,000円
年間でおよそ10万8,000円の減税になる計算です。もしこの子どもが18歳(一般の区分)だった場合は71,000円ですから、19歳になった年から3万7,000円ほど税負担が軽くなるという関係になります。
複数の家族を扶養している場合
扶養控除は、対象となる家族の人数分だけ受けられます。
たとえば所得税率20%の方が、大学生の子ども1人と、同居している70歳以上の母親を扶養している場合、
- 特定扶養親族:171,000円
- 同居老親等:161,000円
- 合計:約332,000円
年間でおよそ33万円の減税になる計算です。
上の金額はすべて目安です
しくみを理解していただくための概算であり、実際には次の点で変わります。
- 復興特別所得税(所得税額の2.1%)は計算に含めていません
- 所得税率は課税所得(各種控除を差し引いたあとの金額)で決まります。年収ではありません
- 住民税の所得割の税率は標準で10%ですが、自治体によって異なる場合があります
- 住民税には均等割もあり、扶養控除は所得割に影響します
- そもそも納める税金がない場合は、控除があっても減税の効果は出ません
ご自身の正確な金額は、国税庁の確定申告書等作成コーナーやお住まいの自治体の案内でご確認ください。複雑なケースは税理士にご相談ください。
令和7年に新設された「特定親族特別控除」
19〜22歳の子どもがアルバイトで稼ぎすぎると、扶養控除が一気になくなって世帯の手取りが減る——という問題への対応として、令和7年度税制改正で特定親族特別控除が新設されたとされています。
国税庁によると、対象となる「特定親族」は、その年12月31日時点で次に当てはまる方とされています。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族・3親等内の姻族)または里子
- 納税者と生計を一にしている
- 年齢19歳以上23歳未満
- 合計所得金額が123万円以下
- 事業専従者でないこと
- 控除対象扶養親族に該当しないこと
控除額は、合計所得金額に応じて段階的に下がっていきます。
| 特定親族の合計所得金額 | 控除額 |
|---|---|
| 58万円超85万円以下 | 63万円 |
| 85万円超90万円以下 | 61万円 |
| 90万円超95万円以下 | 51万円 |
| 95万円超100万円以下 | 41万円 |
| 100万円超105万円以下 | 31万円 |
| 105万円超110万円以下 | 21万円 |
| 110万円超115万円以下 | 11万円 |
| 115万円超120万円以下 | 6万円 |
| 120万円超123万円以下 | 3万円 |
給与収入だけの場合、188万円以下が対象の目安とされています。
注目したいのは、合計所得金額58万円超85万円以下(給与収入でおよそ123万円超150万円以下)の範囲であれば、控除額が特定扶養親族と同じ63万円になる点です。子どものアルバイト収入が123万円を少し超えても、いきなり控除がゼロになるわけではない、というしくみになっています。
この控除は令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されるとされています。
手続きの流れ
会社員・パートの方
年末調整で手続きします。
- 勤務先から配られる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、扶養親族の氏名・生年月日・続柄・所得の見積額などを記入する
- 同居老親等に当たる場合はその旨をチェックする
- 特定親族特別控除を受ける場合は、所定の申告書に記入する
- 期限までに勤務先へ提出する
年末調整全体の流れは年末調整とはをご覧ください。
自営業・年末調整で申告し忘れた方
確定申告で扶養控除を申告します。申告書の「扶養控除」欄に、扶養親族の情報と控除額を記入します。
過去の年分について申告し忘れていた場合、還付を受けるための申告は一定期間さかのぼってできる場合があるとされています。詳しくは税務署にご確認ください。
確定申告が必要かどうかは確定申告の判断ガイドもあわせてご覧ください。
注意点
- 16歳未満は扶養控除の対象外とされています。年少扶養親族として申告書には記入しますが、控除は受けられません
- 同じ人を2人で重複して扶養控除の対象にすることはできません。共働きの夫婦で子どもを両方の扶養に入れる、といったことはできないとされています
- 別居している親を扶養控除の対象にする場合、生活費の送金など「生計を一にする」事実が必要とされています
- 扶養親族の所得要件は令和7年分から58万円以下(給与123万円以下)に変わりました。以前の103万円で判断しないようご注意ください
- 税の扶養と社会保険の扶養は別の制度です。税の要件が変わっても、社会保険の106万円・130万円の基準は変わっていません
- 老人ホームへの入所など、同居老親等に当たるかどうかの判断が難しいケースがあります
よくある質問(FAQ)
Q1. 中学生の子どもは扶養控除の対象になりますか? A. 控除対象扶養親族は「その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人」とされているため、対象になりません。16歳未満については児童手当などの給付で支援するという考え方によるものとされています。
Q2. 別居している親を扶養控除の対象にできますか? A. 「生計を一にする」ことが要件とされており、必ずしも同居している必要はないとされています。生活費の送金などの実態が必要です。なお、この場合は同居老親等ではなく老人扶養親族(48万円)の区分になります。
Q3. 大学生の子どものアルバイト代が130万円になりました。扶養控除はどうなりますか? A. 合計所得金額が58万円を超えるため控除対象扶養親族には該当しませんが、令和7年に新設された特定親族特別控除の対象になる場合があります。給与収入130万円であれば合計所得金額は65万円ほどとなり、控除額63万円の区分に当たる計算です。
Q4. 夫婦のどちらが扶養に入れたほうが得ですか? A. 同じ人を重複して扶養控除の対象にすることはできないとされています。一般に所得税率の高い方が控除を受けたほうが減税額は大きくなりますが、住民税の非課税判定など他の要素も関わるため、一概には言えません。
Q5. 扶養控除を申告し忘れました。あとから受けられますか? A. 確定申告で申告できる場合があります。過去の年分についても、還付を受けるための申告は一定期間さかのぼってできる場合があるとされています。税務署にご確認ください。
まとめ
- 扶養控除の控除額は、所得税で一般38万円・特定扶養親族63万円・老人扶養親族48万円・同居老親等58万円
- 住民税の控除額はそれぞれ33万円・45万円・38万円・45万円とされている
- 令和7年分から、扶養親族の所得要件が48万円以下→58万円以下(給与収入123万円以下)に引き上げられた
- 実際の減税額は「控除額×税率」。所得税率10%で大学生の子ども1人なら年約10万8,000円が目安の計算
- 19〜22歳の子どもが給与123万円を超えても、特定親族特別控除の対象になる場合がある
- 16歳未満は扶養控除の対象外。税の扶養と社会保険の扶養は別の制度
- 最新情報は国税庁「No.1180 扶養控除」で必ずご確認ください
年末調整の申告書を出す前に、ご家族の年齢と所得を一度確認してみてください。特に子どもが19歳になる年、親が70歳になる年は控除額が変わるタイミングです。
参考資料
最終確認日
最終確認日: 2026-07-17
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