10月に入ると、契約している保険会社から「生命保険料控除証明書」というはがきや封書が届きます。年末調整の書類と一緒に会社へ出すもの、という認識のまま毎年やり過ごしている方も多いのではないでしょうか。

生命保険料控除は、その年に払った保険料に応じて課税所得を小さくする所得控除です。医療費控除のように領収書を集める必要はなく、届いた証明書を書類に転記するだけで使えます。

そして令和8年分(2026年分)は、この控除に1つ変更が入りました。23歳未満の扶養親族がいる場合、一般の生命保険料控除の上限が4万円から6万円に引き上げられています。ただし「上限が上がった=控除が増える」とは限らないところが、この改正のややこしいところです。

この記事でわかること

  • 生命保険料控除の3つの枠(一般・介護医療・個人年金)と上限額
  • 新契約(平成24年1月1日以後)と旧契約(平成23年12月31日以前)の計算式の違い
  • 令和8年分の「6万円特例」で控除が増える人・増えない人
  • 控除額に対して、実際に軽くなる税金がいくらぐらいかの目安
  • 年末調整で出し忘れたときのやり直し方と、令和9年から変わる添付書類の扱い

会社員の年末調整そのものの流れは年末調整とは?会社員が知っておきたい基本で扱っています。この記事は生命保険料控除だけにしぼった内容です。

まず結論:上限は所得税12万円・住民税7万円

項目内容
控除の種類所得控除(課税所得を減らす)
枠の数一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3つ
所得税の上限各枠4万円・合計12万円
住民税の上限各枠28,000円・合計70,000円
令和8年分の特例23歳未満の扶養親族がいる場合、一般枠(新契約)の上限が6万円
必要な書類保険会社が発行する生命保険料控除証明書
手続き会社員は年末調整、それ以外は確定申告
根拠法令所得税法76条ほか

大事な前提が1つあります。所得控除は税金がそのまま戻ってくる制度ではありません。控除額に自分の税率をかけた分だけ税負担が軽くなる、という関係です。控除12万円をフルに使っても、所得税率5%の方なら所得税の軽減は6,000円程度にとどまります。

対象になる人:3つの枠に分けて考える

国税庁は、控除の対象となる保険契約を3種類に分けています。

枠主な対象
一般生命保険料生存または死亡に基づいて保険金が支払われる保険・共済
介護医療保険料疾病やけがで医療費支払事由に基づき保険金が支払われる保険(平成24年1月1日以後の契約)
個人年金保険料一定の要件を満たし「個人年金保険料税制適格特約」が付いた年金保険

判断に迷ったときは、自分で分類する必要はありません。届いた控除証明書に、どの枠に該当するかが印字されています。

対象になるのは、保険金等の受取人のすべてが「保険料を払った本人・配偶者・その他の親族」である契約です。また、保険期間が5年未満のいわゆる貯蓄保険・貯蓄共済や、傷害保険契約、財形貯蓄契約などは対象外とされています。

対象にならないもの

  • 保険期間5年未満の貯蓄保険・貯蓄共済
  • 傷害保険契約、信用保険契約、財形貯蓄・財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄
  • 国外で外国の保険会社と締結した契約
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金 … こちらは小規模企業共済等掛金控除という別の控除です

iDeCoの掛金は生命保険料控除ではないため、上限12万円の枠とは無関係に全額が所得控除の対象になります。制度の違いはiDeCoとつみたてNISAの違い・自分に合う選び方でも触れています。

計算式:新契約と旧契約で表が違う

平成24年(2012年)1月1日を境に、計算式が2本立てになっています。

新契約(平成24年1月1日以後に締結)

年間の支払保険料等控除額
20,000円以下支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円

旧契約(平成23年12月31日以前に締結)

年間の支払保険料等控除額
25,000円以下支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超一律50,000円

旧契約は1枠あたりの上限が5万円と大きい代わりに、介護医療保険料控除の枠がありません。旧契約の医療保険・介護保険は「旧生命保険料」として一般枠に入ります。

新旧の両方に加入している場合

一般枠と個人年金枠では、次のように整理されています。

  • 旧契約の年間支払保険料が6万円を超えるとき … 旧契約だけで計算(最高5万円)
  • 旧契約の年間支払保険料が6万円以下のとき … 新契約の計算額と旧契約の計算額の合計(最高4万円)

つまり旧契約の保険料が年6万円を超えているなら、新契約の分を足しても控除は増えません。この場合は旧契約だけで申告するほうが有利になります。

令和8年分の変更点:23歳未満の扶養親族がいる場合の6万円特例

令和7年度税制改正で、子育て世帯向けの措置が入りました。財務省の大綱には、令和8年分について、23歳未満の扶養親族がいる居住者の一般生命保険料控除(新生命保険料)の計算を次のとおりとする、と書かれています。

年間の新生命保険料控除額(令和8年分・23歳未満の扶養親族がいる場合)
30,000円以下新生命保険料の全額
30,000円超 60,000円以下新生命保険料×1/2+15,000円
60,000円超 120,000円以下新生命保険料×1/4+30,000円
120,000円超一律60,000円

なお、令和8年度税制改正の大綱では、この特例の適用期限を1年延長するとされています。国税庁のタックスアンサーも「令和8年分以降の申告の場合」という書き方に変わっています。

「23歳未満の扶養親族」には16歳未満の子も含まれます

ここが見落とされやすい点です。国税庁は、扶養控除の対象になる控除対象扶養親族を「扶養親族のうちその年12月31日現在の年齢が16歳以上の人」と定義しています。裏を返せば、扶養親族そのものに年齢の下限はありません。

児童手当の対象になっている小さなお子さんは扶養控除の対象外ですが、生計を一にしていて合計所得金額の要件(令和8年分は62万円以下)を満たすなら扶養親族には当たります。「うちは扶養控除を受けていないから関係ない」と判断してしまわないよう、注意したいところです。扶養控除の区分そのものは扶養控除はいくら?38万・63万・48万・58万の区分と実際の減税額を計算で整理しています。

上限が上がっても控除が増えない人がいます

大綱には「一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額は12万円とする(現行と同じ)」という注記が付いています。ここが今回のいちばん重要な部分です。

3つの枠それぞれで年8万円超の保険料を払っている方で計算してみます。

特例なし特例あり(23歳未満の扶養親族あり)
一般(新契約・年10万円)40,000円55,000円
介護医療(年10万円)40,000円40,000円
個人年金(年10万円)40,000円40,000円
単純合計120,000円135,000円
合計上限適用後120,000円120,000円

単純合計は増えているのに、12万円の天井にぶつかって最終的な控除額は変わりません。恩恵を受けやすいのは、一般の生命保険だけ、あるいは合計が12万円に届いていない方ということになります。

一方、一般の生命保険(新契約)を年12万円払っていて他の枠がない方なら、控除は40,000円から60,000円へ、20,000円増えます。所得税率10%の方で軽減される所得税は2,000円程度という規模感です。

住民税は変わりません

この特例は所得税の措置です。財務省の大綱でも、個人住民税について所要の措置を講ずるとされたのは住宅ローン控除など別の項目で、生命保険料控除は含まれていません。住民税の生命保険料控除は、新契約で1枠あたり28,000円・合計70,000円のまま据え置きです。

住民税の新契約の計算式は、12,000円以下は全額、12,000円超32,000円以下は「×1/2+6,000円」、32,000円超56,000円以下は「×1/4+14,000円」、56,000円超は一律28,000円とされています(東京都主税局の案内による)。所得税と住民税で表が違う点は、住民税とは?いつ・いくら払うのかを初心者向けに解説でも触れているとおりです。

実際にいくら軽くなるか:ケース別の試算

新契約の一般10万円・介護医療4万円・個人年金なし、という設定で計算してみます。

所得税分

  • 一般:80,000円超なので 40,000円
  • 介護医療:40,000円なので「×1/2+10,000円」= 30,000円
  • 合計 70,000円

住民税分

  • 一般:56,000円超なので 28,000円
  • 介護医療:40,000円なので「×1/4+14,000円」= 24,000円
  • 合計 52,000円

所得税率10%・住民税率10%とすると、軽減される税額の目安は所得税7,000円+住民税5,200円=約12,200円です。ここに23歳未満の扶養親族がいれば、一般枠が55,000円になり所得税の控除合計は85,000円へ。増える税の軽減は1,500円程度という計算になります。

金額としては大きくありませんが、書類を出すだけで毎年続く種類の控除です。出し忘れているならもったいない、という位置づけで考えるのが実態に近いと思います。

手続き・流れ

会社員の場合(年末調整)

  1. 10月ごろ、保険会社から控除証明書が届く
  2. 勤務先から配られる「給与所得者の保険料控除申告書」に、証明書の内容を転記する
  3. 証明書を添付して勤務先に提出する(提出期限は勤務先ごとに異なります)
  4. 12月または1月の給与で精算される

証明書には「12月末までに払い込む予定の金額(申告額)」と「証明日時点の払込済金額」の2つが書かれていることがあります。12月分まで払う予定なら申告額のほうを使うのが一般的ですが、記載の指示に従ってください。

自営業・年末調整で出し忘れた場合(確定申告)

確定申告書の生命保険料控除欄に記入し、証明書を添付するか提示します。年末調整で控除を受けた分については添付不要です。

なお、令和7年度税制改正で、令和8年分以後の確定申告書を令和9年1月1日以後に提出する場合は、控除証明書の添付・提示に代えて、記載事項を書いた明細書を添付できることになりました。この場合、税務署長は申告期限などから5年間は証明書の提示・提出を求めることができるとされているため、証明書自体は手元に保管しておく必要があります。

年末調整で出し忘れた方は、確定申告(還付申告)でやり直せます。確定申告が必要かどうかの判断は確定申告、必要?会社員・副業・自営業の判断ガイドを参考にしてください。

注意点

  • 証明書の枠を自分で判断しない:1枚の証明書に旧生命保険料と新生命保険料の両方が記載されていることがあります。記載どおりに分けて記入してください
  • 契約者名と負担者が違う場合:控除を受けられるのは実際に保険料を負担した方です。家族名義の契約については国税庁の質疑応答事例に例示がありますが、判断に迷う場合は税務署へご相談ください
  • 剰余金や割戻金がある場合:支払保険料等は、その年に受けた剰余金・割戻金を差し引いた金額とされています
  • 住民税は還付ではありません:住民税への反映は翌年度の税額が下がる形で、6月からの天引き額に表れます
  • 数値は年度で変わります:この記事は令和8年4月1日現在の法令等に基づく国税庁の資料をもとにしています

よくある質問

Q1. 控除証明書をなくしてしまいました。

A. 保険会社に再発行を依頼できるのが一般的です。会社によってはWebサイトやマイナポータル連携で電子的な控除証明書を取得できる場合もあります。手続きは契約先の保険会社にご確認ください。

Q2. 年末調整で出し忘れました。もう間に合いませんか。

A. 確定申告で控除を受けられます。給与所得者で還付を受けるための申告(還付申告)は、その年の翌年1月1日から5年間提出できるとされています。

Q3. 6万円特例は住民税にも使えますか。

A. この特例は所得税の措置です。住民税の生命保険料控除の上限は、新契約で1枠28,000円・合計70,000円のままとされています。

Q4. 子どもが大学生(21歳)でアルバイトをしています。扶養親族に当たりますか。

A. 令和8年分は、生計を一にしていて合計所得金額が62万円以下(給与収入136万円以下)であれば扶養親族に当たります。62万円超123万円以下の場合は特定親族特別控除の対象という別の区分になります。判断は勤務先または税務署でご確認ください。

Q5. iDeCoの掛金も生命保険料控除に含めますか。

A. iDeCoの掛金は小規模企業共済等掛金控除という別の所得控除です。生命保険料控除の12万円の枠とは別に扱われます。

まとめ:まず証明書の「枠」と「新旧」を見る

  • 生命保険料控除は一般・介護医療・個人年金の3枠。所得税は合計12万円、住民税は合計70,000円が上限です
  • 新契約(平成24年1月1日以後)と旧契約では計算式が違い、旧契約の保険料が年6万円超なら旧契約だけで計算します
  • 令和8年分は、23歳未満の扶養親族がいる場合に一般枠(新契約)の上限が6万円になりました
  • ただし合計12万円の上限は据え置きのため、3枠すべてを使っている方は控除額が変わらないことがあります
  • 「扶養親族」に年齢の下限はなく、16歳未満のお子さんも要件を満たせば含まれます
  • 住民税側の上限は変わっていません
  • 令和8年分以後の確定申告書を令和9年1月以後に提出する場合、証明書の添付に代えて明細書を使えるようになります
  • 最新情報は国税庁 タックスアンサー No.1140 生命保険料控除で必ずご確認ください

まず手元でやることは3つです。①届いた控除証明書の「一般・介護医療・個人年金」の区分と「新・旧」を確認する、②23歳未満の扶養親族がいるかどうかを確認する、③3枠の単純合計が12万円に届いているかを見る。ここまで分かれば、特例の恩恵があるかどうかは自分で判断できます。

迷ったときの問い合わせ先

  • 控除の対象になるか・計算方法:所轄の税務署(国税庁の税についての相談窓口)
  • 控除証明書の再発行・記載内容:契約している保険会社
  • 年末調整の書類の書き方:勤務先の給与担当部署
  • 住民税への反映:お住まいの市区町村の税務課
  • 個別具体的な税額の計算:税理士

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参考資料

最終確認日

最終確認日: 2026-09-10

本サイトは公的機関ではありません。税制は改正されることがあり、控除額や適用要件は年分によって変わります。記事中の計算例は、控除のしくみを理解するための概算です。ご自身の税額や、個別の契約が控除の対象になるかどうかの判断は、所轄の税務署または税理士にご確認ください。